京都南座三月花形歌舞伎2024

京都南座三月花形歌舞伎2024

今年も3月2日から京都・南座では、花形若手役者による
三月花形歌舞伎が開催されました。

 

 

この3月の南座での花形公演も4年目を迎え、定着していきそうな感じ。
今年は中村壱太郎さん、尾上右近さん、
中村隼人さんと看板役者が3人で奮闘。

2024年は、近松門左衛門の歿後300年にあたるとかで、

心中天網島を元にした「河庄」と「女殺油地獄」
という上方歌舞伎の名作が並びました。


私も初日から、まる1日南座で芝居を楽しみましたが、
上方のベテランが脇をしっかりと固め、
東の人気役者がシンで芝居を見せるというのも興味深く、
見ごたえがありました。

ところで、歌舞伎には、医者が活躍するものはあまりありませんが、
薬が出てくるシーンはよくあります。
今回の「油殺女地獄」でも、何の薬かはわかりませんが、
病に伏す娘に主人公・与兵衛の母おさわが大きな薬袋をを持って帰ってきます。


四谷怪談ではお岩さまが薬(毒薬ですが…)を盛られて面相が崩れる。。。
蜘蛛絲梓弦には蜘蛛の精が薬売りに化けて薬を届けに来るとか、
気鬱の薬なんていうものが出てきたり、


薬の名前がはっきり出るものでは、歌舞伎十八番の一つで有名な
「外郎売」小田原名物の妙薬、一服飲めば効果てきめん。
舌が滑らかになって早口の言い立ても鮮やかにやれる、とか。
この外郎は、中国伝来の薬・透頂香です。


江戸時代、医者に診てもらうのは高価なことでしたし、
今のように資格や免許があったわけではないので、
非科学的な治療や眉唾ものな自称医者も多かったことでしょう。

庶民は病気になると売薬に頼っていたようです。
富山の「反魂丹(はんごんたん)」、伊勢の「万金丹(まんきんたん)」、
近江の「和中散(わちゅうさん)」などが庶民の万能薬だったそうです。

「六神丸」も江戸時代から多くの人に愛されてきた薬です。



六代目利兵衛の長男利三郎が、親戚の清水焼の陶工・真清水蔵六と
景徳鎮へ渡中したとき、上海で病気になり、現地で入手した六神丸で
たちまち快癒したのをきっかけにこの六神丸を日本へ輸入し、
売り広めようと雷氏方という処方を学んで帰国しました。


当初は、輸入して販売していましたが、明治27年、
六神丸の評判がよいため薬屋へ転業。六神丸を輸入すると同時に、
国産化の研究に精魂を注ぎ、明治32年、輸入している六神丸に
鶏冠石(砒素)が含まれていたため、輸入禁止となったのを機に、
国産の赤井筒薬六神丸の販売を開始した歴史があります。


六神丸だけでなく、日本各地で漢方由来の家庭薬が作られ続けていて、
長い間、日本人が愛してきました。時折、六神丸の名前はピンと来なくても、
パッケージを見た瞬間に「そうそう!うちのおばあちゃん飲んでた」とか、
「実家にはいつもあった」とおっしゃる方も。

長く飲まれてきたことが、安心の証です。
伝えられ、飲まれ続けてきた日本独自の薬、これからも大切にしたいですね。

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